《『或る家の記憶』シリーズ》
このシリーズは、築70年ほどの祖父母の家の取り壊しがきっかけで描いた。
子供の頃はお正月に夏休みにと、親戚みんなが集まって楽しい思い出がたくさんある懐かしい家。
祖父母が奈良に越してから、叔母がピアノのレッスンで訪れる以外は永らく空き家状態だった。
長年まめに風を通しに通っていた叔母に取材を申し込み、20年ぶりくらいに足を踏み入れた。
そこは、空き家独特のイヤな空気が一切なく、いまにも襖の奥から「よう来たなー」という祖母の姿が現れそう。
『玄関』2014 727×606mm
「gallerism in 天満橋 2014」 展示風景
『廊下』(左)727×606mm・『書斎』(右)910×727mm 2014
『縁側の椅子』(左)2014 727×606mm
『2階の廊下』2014 727×606mm
『ごめんください』2014 1140×230mm
2014年の「gallerism in 天満橋」というイベントに、この作品で参加した。
実際に玄関にあった古い扉つきの棚を展示に使用。
今まで、描きたくなる対象としての室内風景は、憧れでもって選ぶことはあったが、思い出のこもった家屋というのはなかった。
制作中は祖父母の居た頃を感じながら、家の中を歩き回っているような感覚になり、じつに貴重な経験だった。